ハゲタカ

NKHのハゲタカの再々放送を、土日と観た。最終回は月曜だが、こちらは外出で観られない。
いろいろ賞を取ったとのことだが、それにふさわしい出来だと思う。
このドラマの良いところはいろいろ言われているが、なんと言ってもバイアウトファンドの格好良さではないだろうか。金をがっぽり儲けるとか、いい服着ている、いい車乗っているということではなく、資本主義というゲームのルールを頼りに、自分の機転だけ(もちろんバックには巨額のファンドがあるが、それとて、自ら集めたもの)で乗り込んでいき、巨大な組織に立ち向かっていくところに、爽快感を感じる。ほとんどの人間が、会社という組織のなかに閉じこもって(閉じ込められて)、いわゆる引きこもり状態で働いているのに対して、一歩外に出れば魑魅魍魎が闊歩する世の中で、切ったはったする姿は、言ってみれば江戸時代の藩士と浪人侍の対比のようにも見える。そこに、日頃、組織に守られているが、そこから抜けられない多くの人たちが、ある種の羨望を持つのではないだろうか。そういった意味では、原作(初回の放送の後、一気に1、2と買って読んでしまった)にはない、柴田恭平の役(銀行の頭取候補が、見切りを付けて、フリーの再建屋になる)も、主役の鷲津同様に、魅力的な存在になっている。
鷲津が、原作よりも、「甘い」ところがある。バックグランドが、ドラマ:邦銀→バブル崩壊を経験→アメリカのバイアウトファンド、原作:船場アメリカで商売&プロのジャズミュージシャンを目指す→バイアウトファンドにスカウト という違いがあるが、バブル崩壊の前と後で日本がどうかわったのか、そして何がかわっていないのか、あるいは変えてはいけないのか、というテーマには、ドラマの設定の方がストレートで、わかりやすかった点で、評価できる。その「甘さ」だが、弱者への優しさだとするとそのジレンマで苦しむというのは、人間として当然の姿であろう。よく、新聞か雑誌の受け売りで、競争原理がもっとも効率が良いとか、言う輩がいるが、世の中そんなに単純だったら、今まで何百年もかけて、社会システム構築に時間かかってやしないよ、と言いたくなる。しかし、難点は、競争原理、自己責任、自助努力という論理は、非常に強く、自分もいい生活を得たければ努力すればいいし、それができなければ、下流であることに甘んじざるを得ないのは当然だと言われると、その否定は、自分は努力したくない、楽したいということになるから、反論が難しい。既得権益にあぐらをかかせることなく、しかも皆が利益を分ちあえいながら安心して生活できる世の中、まだまだいろいろな模索が行われていくだろう。ただ、それを誰かが実現してくれないかと不平を言ってもまったく得るところないから、競争原理至上主義を前提にして自らを律して、家族や他人には、できるだけ優しさを与える、しかないと思っている。
で、ドラマのエンディングの曲がいいから、どこかに転がっていないかなと思っていたら、YouTubeで、「ハゲタカ」のパロディーを発見。これが傑作。オリジナルメンバー総出演。外人の鷲津の弟子が髪の毛きっちゃっていたけど。


で、最後は蒼井優ネタとなるが、鷲津役の大森南朋は「花とアリス」にちょこっと出ていた。「蟲師」でも共演。「ハゲタカ」までは、ちょと冴えないけど温厚な人の役が多かったと思うが、「ハゲタカ」では、冷徹さを装うけど、内面には苦悩を抱えるビジネスマンの役をうまく演じていた。NHKのスタジオパークにゲストで出演していたところをたまたまみていたが、無口でシャイだが、結構とんがっている感じもあった。蒼井優と直接絡むところも観てみたい。ふと思うのだが、「ハゲタカ」の好評を受けて、パート2も考えているはず。原作のパート2で、日光のホテル(あきらかに金谷ホテルだが)の若くして経営者となる女性が出てくるのだが、凛としたところ、賢いところ、しかし、鷲津に助けてもらう女らしさ、弱さを持つところというキャラクターで、蒼井優採用はどうだろうか。ちょっと年齢的にあわないところもあるかもしれないけど、今の資生堂のCMのイメージ(できる女 in NewYork)にもあっているし。NHKで6回ものぐらいの方が、映画女優蒼井優を消費してしまうこともないし。